晩秋の思い
紅葉はまだというのに、厳冬に向けての心の委縮に不安が生じてしまう。
失いかけた昔をしみじみと回想しながら「オールドパー」の栓を抜く。
シングルモルトが心の隅々にまで染み渡り、ほんのりとそれはまるで手術の際の麻酔が効きだした時と重複して自身を怠惰な現実から逃避させてくれる。足元がふわーとして麻薬だ。
自身の内面に隠された投影されない人生の永劫・・・徐々にではあるが、不思議に変化する。その一瞬の変化の一つに「あの時、ああすれば良かった。」と口癖に過去を思い出してしまい、しかも辛く悲しいことばかり浮かんでくる。
それは、少年期から、思春期に。そして青年期になろうかとする自身の人生70年のほんのわずかなとても短い時間帯だが、私にはほとんどを費やしたように思えてならない。あの頃の人生は現在よりもとても長く感じてしまう。
今であれば修正可能な出来事ばかりが浮かんで仕方がない。そんな過去へ置いてきた忘れ物を取りに行きたいと常に思うのである。
隔世之感ではあるが、今更ながらと笑われてしまうような思い出が詰まった「玉手箱」を取りに帰りたい。
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中身が空っぽになれば、ただの瓶。すべてを失ったような錯覚だ。「感傷的な秋」はとても切ない。